第121章 奥様の身分に問題がある

黒谷グループの本社ビルは、闇に沈んでいた。

社員はみな退社し、残っているのは黒谷大空ただ一人。廊下の隅で酒をあおり、憂さを晴らしている。

黒谷優さえ引きずり下ろせば、自分がトップに立てる――そう思っていた。だが現実は違った。社内の古株の連中は、頑として「社長は黒谷優だ」の一点張り。しかも半数は、これまで大空がろくに意識もしてこなかった福田副社長のほうを推している。肝心の自分には、誰も期待すらしていない。

床には空き瓶がいくつも転がっていた。黒谷大空はげっぷを漏らし、壁に手をついて、ぶよぶよとした体をふらふら起こす。

帰ろうとした、そのとき。

見慣れた背中が、足早にオフィスへ向かって...

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